市街化調整区域とは
都市計画法の定義としては「市街化を抑制すべき区域」です。
簡単に言えば、大規模な施設等を建設することはもちろん、許可なく家を建てることができないとして定められている区域のことです。
「都市計画法」という法律には以下のように記載があります、
”都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができる。”
あくまでも抑制、もしくは調整する区域として存在しているので必ずしも”禁止”されているわけではありません。
この区域では、開発行為は原則として行わず、都市施設の整備も原則として行われない。つまり、新たに建築物を建てたり、増築することを極力抑える地域となる。ただし、一定規模までの農林水産業施設や、公的な施設、および公的機関による土地区画整理事業などによる整備等は可能である。既存建築物を除いては、全般的に農林水産業などの田園地帯とすることが企図されている。市街化区域と対をなす。市街化調整区域は、国土の約10.3%を占めている。
都道府県は都市計画区域について、都市計画に市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができるが、政令指定都市には区域区分を定めなければならない。市街化調整区域では市街化を抑制するため、原則として用途地域を定めない。
なお市街化調整区域のうち、土地区画整理事業などにより計画的な市街地整備を行う準備が整った段階で市街化区域に編入できる区域として、特定保留区域を設ける場合がある
市街化区域とは
「市街化調整区域」ともう1つ『市街化区域』に関しても確認しておきましょう。
「市街化調整区域」が市街化を抑制するための区域として存在している一方で、「市街化区域」とは”市街化を促進するため”に存在している区域のこと。
つまり、街の活性化のため開発が既に計画されている区域のことを指すのです。
これから大きな発展を見せる区域ということもあり、住宅の建設には不向きな一面もありますがこちらも「市街化調整区域」同様に必ずしも住宅を建てることの出来ない区域ではありません。
定義として挙げられているのは、
”既に市街地として形成されている区域、そして10年以内に計画的に市街化を進める地域”というもの。
「市街化区域」が都市化を目指した区域なら、「市街化調整区域」はなるべく自然を残した区域、ということになるでしょう。
市街化調整区域に新築の家を建てる方法・条件は?
土地を探して見つけた場所が「市街化調整区域」だった、そんなこともあるでしょう。
原則的に「市街化調整区域」での新築住宅の建築はできません。
しかしある条件によっては可能ともされ、すぐに諦める必要はありません。
ではその条件とは何なのか、建築可能な条件・方法を1つずつみていきましょう。
市街化調整区域で家を建てる条件
かつては「既存宅地」なら市街化調整区域でも新築住宅の建設が可能、とされていました。
しかし制度は廃止、現在では既存宅地でも許可を得る必要があります。
つまりこの「許可」が市街化調整区域での家を建てるための「条件」です。
許可とは「都市計画上の許可」とされ、ここで許可が出れば家を建てることもできるようになります。
しかし現状は”ほぼ不可能”とされており、許可が出る可能性は非常に低いと言われています。
既存宅地にはかつて「特例措置」が出されていましたが、その期間も終了。
つまり事実上はほとんど建てることができないのです。
分家住宅というルール
上で説明した許可と同様に「建築許可」を得られるのが「分家住宅ルール」。
もともと市街化調整区域に土地を所有している親族がいる場合、その子や孫にあたる人が家を建てる為のルールになります。
「分家住宅ルール」の中にもいくつもの条件があるので以下でご紹介します。
・孫分家、もしくは生前贈与の土地でない
・本家世帯が所有していた土地、もしくはそれらを相続した土地
・500平方メートル以下の敷地
・婚姻等の合理的な理由
・土地所有者との2年以上の同居
・市街化区域に土地を持っていない
細かな条件がいくつも並び、それぞれを証明できるものがないといけません。
さらにこの「分家住宅ルール」では申請に特有の書類も必要になり、ただでさえ難しい申請がさらに複雑になっていきます。
それら「分家住宅ルール」に必要な書類は以下、
・家系図
・土地閉鎖謄本
・土地所有者と申請者の土地家屋名寄帳
・申請者の戸籍全部事項証明書と住民票
・本家の戸籍全部事項証明書と住民票
・申請者の現住所地の家屋の登記全部事項証明書
・土地使用承諾書
・第三者への売却、譲渡、用途変更しない旨の申請者からの誓約書
・申請者及びその両親において市街化区域内に土地を所有していない旨の誓約書
・農業従事者証明
・建築予定地の登記全部事項証明書と公図
開発許可を得る為に非常にたくさんの書類を用意する必要があることが分かります。
中でも一番上の「家系図」など用意が難しい物もありますが、これは手書きの物でも大丈夫な場合もあるようです。
分家住宅ルールの適用はそれだけ難しく、書類も市役所で事足りる物もあれば法務局という場所に行く必要のある物も存在します。
しかし数も書類も小難しい物が多くなっていますが、窓口へ行けば案外簡単に手に入る物も多いのでまずは必要な場所に行って話をするのがよいでしょう。
既存宅地
現在施工されている「都市計画法」、これが施工される前から既にそこに建っていた住宅に限って認定されているのが「既存宅地」です。
こういった「既存宅地」とされる住宅に限っては今後の建て替えも可能とし、都市計画法における範囲内で至っても一般的な方法を用いての新築住宅の建設が可能とされていました。
これはかつての話、2001年に都市計画法が改正され現在ではこの「既存宅地」に至っても許可が必要とされています。
つまり「既存宅地」という制度自体、現在は廃止になっているということです。
許可がおりる建物
ここまでの情報を見て、この市街化調整区域に一般的な住宅を建てることがどれだけ難しいかが分かるはずです。
では反対にどんな建物なら建てることができるのか、開発許可・建築許可がおりるのか、定められている建物をご紹介します。
・日常生活のため必要な物品の販売等
・農林漁業用の建築物
・鉱物資源・観光資源の利用
・市街化区域内での建築・建設が困難なもの
(※一部引用・引用URL:https://www.athome.co.jp/contents/words/term_704/
その他いろいろと難しい言葉が羅列していますが、要約すれば「農林業者の住宅」や「倉庫」「畜舎」、そして公益上重要になる「公民館」などの建物は開発可能。
これらは基本的に許可なく開発許可がおり、許可が必要な物と言えば既に紹介している「分家住宅」「日用品販売の店舗」などになります。
建築可能な建物の線引きは非常に難しいので、開発許可を貰うにはひとまず専用の窓口にいくことになるでしょう。
そして知事もしくは市長の許可を得ることになります。
市街化調整区域に住宅を建築することのデメリットはある?
住宅建設が非常に難しいとされる「市街化調整区域」。しかし難しいだけで不可能ではないのもまた事実です。
ではここで住宅を建てることに何かデメリットがあるのか、家を建てられるということ前提でデメリットを見ていきます。
売却が難しい
後々引っ越しなどの理由で住宅を売却する際、土地柄なかなか買い手が見つからないという問題が度々発生するのが「市街化調整区域」の特徴。
開発を抑制している区域なので、都市部に比べれば便利さが少なくなってしまうのが原因で「市街化調整区域=売れない」というイメージも定着してしまっています。
賃貸に向かない
近くに大きな施設も無く、駅からも遠くなりがちな「市街化調整区域」は賃貸として貸し出す場合にも借り手が見つからないことも少なくありません。
売却時の問題同様に便利さが物を言いますが、反対に都市部から離れた場所を希望する方には受けいれられることが多くなっています。
そもそもインフラ設備が無いこともある
「市街化調整区域」とは簡単に言えば「都市部から離れた自然の広がる土地」のこと。
場所によっては電気も通っていないインフラが不十分な場所ともなるのです。
そのため土地を確保できたとしても、自己負担でインフラ整備を行う必要も出てきてしまいます。
建て替えでさえ許可がいる場合も
既にそこに家があり、第三者がそれを引き継ぐ場合であっても再び手続きが必要になる場合もあります。
親族であれば過去に貰っている許可をそのまま使用することもできますが、第三者ともなれば話は別。
そこで許可が下りたとしてもその土地が「市街化調整区域」である以上、建て替えに関しても許可を得る必要があり場合によっては許可がおりないこともあるようです。
市街化調整区域に住宅を建てることのメリットはある?
「市街化調整区域」は家を建てるには何よりもデメリットの多い区域。
しかし何度もお伝えしているように、100%不可能とは言い切れない区域でもあります。
では数多く存在するデメリットの反対となるメリットについてもご紹介しておきましょう。
価格が安い
都市部の土地価格が高くなるのは当たり前。それだけ便利な場所であることが原因で、その反対となる「市街化調整区域」は不便な反面価格が比較的安くなります。
場所によっては都市部の半分以下の土地価格となることもあり、上手く許可を得ることが出来れば安く家を建てることができるでしょう。
固定資産税の負担が少ない
土地価格の安さは「市街化調整区域」の固定資産税の負担の少なさにも繋がります。
固定資産税はその土地の評価額から算出され、評価額が安くなればおのずと固定資産税も少なくなるのです。
光熱費がお得になるケースも
「市街化調整区域」では下水道の整備が無いこともあり、そういった場合は自身で「浄化槽」を設置しなければいけません。
その費用等は自己負担となりますが、それさえ設置してしまえば一般的に発生する下水道料金は発生しません。
同様に都市ガスにいたっても整備されることもなく、必要な場合はプロパンガスを利用する必要も出てきます。
しかし現在では徐々にZEH住宅が増えているので、このタイプを採用できれば水道代同様ガス代、そしてZEHによる電気代の負担を軽くすることができるのです。
市街化調整区域に家を建てる際の注意点・ポイントは?
一言で「原則家を建てることは出来ない土地」と言われることもある「市街化調整区域」。
実際に不動産へと足を運んだ際にも、「市街化調整区域」という言葉と共にこういった内容の報告を受けることは既に義務付けられているのです。
とはいえ、探してみると案外この区域での新築住宅をはじめとする住宅情報は多く、購入が可能であることが分かります。
そこで今度は「市街化調整区域」で家を建てる際の注意点・ポイントについてをご紹介します。
購入した土地が使えるのか確認する
「原則家を建てられない区域」として存在している「市街調整区域」ですが、一部では購入できる土地も存在しています。
しかし土地の購入は可能でも「建築許可」がおりない場合もあるのです。
もしも購入できる土地を見つけたら、まずは「建築可能か」「増改築可能か」を調べておくことをおすすめします。
不動産も知らないケースがある
その土地が「市街化調整区域」であるのかどうか、実は不動産でさえ詳しい事を知らずに情報提供を行っているケースがあります。
もし検討したい土地が見つかった場合、まずは自身で書面等を調べてみるといいでしょう。
知らなかったとはいえ、そこで契約を結んでしまうことで後々トラブルが発生する危険性もあるので注意が必要です。
住宅用地か農業用か
「市街化調整区域」と定められている土地は用途が決まっており、家を建てることのできる「住宅用地」と農業のための土地「農業用」が存在します。
もちろん「農業用」に住宅を建てる事はできず、その土地に合わせた使い方が原則。そもそも家を建てられる土地であるかの確認も必要です。
書面の確認が何よりも重要
「市街化調整区域」で住宅を建てる、もしくは土地は購入する際、契約前に必ず専門の書類を渡されます。
「都市計画法の許可に関する書面」「建築確認証」といった物で、これらを確認することが正しい使用に繋がります。
難しい言葉も多く、決して簡単な話ではありませんが必ず契約を結ぶ前にしっかりと確認しておきましょう。
市街化調整区域の調べ方は?
「家を建てられるか建てられないか、原則は無理だが条件によってはOK」などなんだかややこしい「市街化調整区域」。
そもそもどこがその区域でどこがそうでないのかよく分かっていないのが現実です。
不動産でさえ中にはしっかりと把握していないところもあり、いきなり不動産へ足を運ぶのは不安。
ではどうやって探せばいいのか、と思ってしまいますが案外調べ方は簡単なのです。
インターネットの利用
インターネット環境をお持ちの方なら、探している土地、検討している土地を「市街化区域」もしくは「市街化調整区域」で検索してみてください。
全国全ての市区町村で取り扱っているわけではありませんんが、しっかりと発表しているところもあり案外見つかる簡単に調べることもできるのです。
市役所・区役所へ足を運ぶ
各市役所や区役所には「都市計画課」という場所が存在します。そこへ行けば確認が可能。
都市計画図という物を取り扱っている場合もあるので、必要ならば確保しておくといいでしょう。
まとめ
これから住宅建築を検討している人も既に話を進めている人も、「市街化調整区域」という言葉が聞き慣れない人も多いはず。
全ての人に当てはまる言葉ではありませんが、もしもこの記事を見て少しでも心当たりがあればすぐに調べてみることをおすすめします。
この区域で住宅建築を検討しているのならなおのこと。
非常に難しい家作りにはなりますが、トラブルの回避と、条件のクリアを達成できれば決してできないことではありません。