鵜沼の家で考えたこと 1 家を建てる時期

鵜沼の家は自邸です。自分自身がどのように考えながら設計したのかを振り返りながら、ブログに書いていこうと思います。
少しでも読む人の参考になれば幸いです。
家を建てる時期。
自邸をいつかは建てようと思っていたのですが、そのタイミングは長女が小学校入学までにと。
親の都合で彼女を転校生にしてしまう事が悪い気がしていました。
今の私の感覚にもあるのですが、小学校の最初からいなかった人はよそから来た人という感じがぬぐえません。
彼女が年中になったころから焦り始めます。早く行動に移さないと遅れるぞと。(設計事務所で家を建てる場合最低1年かかります。計画6か月+工事6か月)
そして家族に相談します。お父さん家を建てたいのだと。
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長女、年中の春

 

 

鵜沼の家で考えたこと 2 資金計画

資金計画

家を建てるためにはまずお金が必要です。
金額によって家の大まかな事は決まってしまいます。
構造、広さ、素材など。
安くても素晴らしい住宅ができる事は否定はしませんが。やはりお金があったほうが良い家になる事は間違いありません。
自分の貯金、妻の貯金、親の援助など総動員します。
ローンを借りる事も検討しましたが、自営業者には厳しいです。また少しの金額でもローンを組む手数料だけで24万円程かかりますよなど言われ、やめました。
家にかけられる金額はおおよそ3500万円と目途を立てました。
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鵜沼の家で考えたこと 3 農用地

農用地

市街化調整区域に家を建てる事ができるのは、既存宅地か農家の分家です。
私の場合は農家の分家として父親の持っている土地を譲り受けて建てる予定でした。
土地代がかからないのでその分建物に予算を回す事ができます。
しかしよく調べてみると、父親の持っている土地はすべて農業振興地域。いわゆる農用地と言われる所でした。
農用地に家を建てるには農振除外という手続きが必要で、これにはかなりの時間(1年程度)がかかるという事でした。
そこでさらによく調べると、農用地しか持っていない農家の分家は、新たに市街化調整区域の土地を買って家を建てる事ができると分かりました。
長女の小学校に入学の時期のため農振除外を待っていられなく、新たに土地を探す事に決めました。

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こんな周りが農地の所は農用地が多い。
農用地を知らず大失敗。土地に目星を付けて基本設計もほぼ終わりかけていたのに、また一からやり直しです。長女年中の秋の事です。

 

鵜沼の家で考えたこと 4 土地探し

土地探し

土地探しの条件として考えたことは、実家に近く、より駅に近い事。
建築的には、北道路で、南に開いている所。
実家の近くには友人も多く、子育てにも良い。駅に近いのは利便性。北道路は玄関を北側に配置して南側をリビング等に有効に使える。南に開くのは、景色と太陽の光が同時に得られる。

不動産屋には市街化調整区域の土地情報はあまりありません。
市街化調整区域の土地を買っても、普通の人は家が建てられないので利用方法がなく、需要がないからです。
市街化調整区域の土地を買うには、地主に直接交渉するしかありません。

頭に浮かんだのは、南に池がある土地と、南に田んぼがある土地。
法務局の不動産情報をあたります。
南に池のある土地は、老人ホームを経営している会社が最近取得した様子で難しそう。
南に田んばのある土地は近所の農家の人。

田んぼのある土地の地主に土地を売ってくれないかと直接交渉して、しばらく経っていいですよとの返事。
自邸の土地が決まりました。

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北側から見る。北側道路が高くなっていて、南に田んぼが広がる。

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南東から見る。南にも道路がある。南側道路からは1mくらい高くなっている。

 

 

 

鵜沼の家で考えたこと 7 基本設計 平面計画

基本設計 平面計画

敷地が決まると同時に基本設計に入ります。考える時間はある程度あったほうがよいのですが、長女の小学校入学の時期を考えるとそれほど時間がありません。以前に考えていた基本設計も土地が違うので、まったく使えません。
一から考え直しです。
鵜沼の家は敷地に対して方形を45°傾けていますが、この大まかなイメージは敷地を何回か見ているうちに自然と出てきました。大まかな方向が決まると、あとはベストなプランができるように何回も何回も試行錯誤します。

当時のエスキス。プランに破綻がないように。使いやすいように。デザインを崩さないように。

 

 

鵜沼の家で考えた事 8 基本設計 断面計画

基本設計 断面計画

基本設計では、平面計画と同時に高さの検討も行います。
鵜沼の家の敷地は北側の道路と南側の道路の高さの差が約3.4mあり、平らな部分が南側道路から1m上がっている土地でした。この平らな部分に建物を建てれば、地盤をほとんど触ることなく(建築工事で土をなるべく触らない事は建築費を抑えるためにとても有効です。)北側道路からアプローチでき、南の道路にも下りる事ができる高さでした。
この高さを考慮して断面計画を練ります。


建物が建つ前の敷地。南東方向から見る。

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北側道路からアプローチするとそのまま2階へ行く事ができる。

 

 

鵜沼の家で考えたこと 9 構造設計

構造設計

基本設計がだいたい固まってくると、構造設計事務所にも相談します。
一級建築士なので構造計算もできるんじゃないかと思われている人も多いと思いますが、複雑な建物や鉄筋コンクリート造や鉄骨造など、確認申請で構造計算書を添付するような建物は、構造を専門に行っている事務所に構造計算をしてもらいます。
鵜沼の家は1階全部と2階の壁が鉄筋コンクリート造、2階の柱と屋根が木造という混構造なので、東海地方にあって特殊な構造解析が得意な藤尾建築構造事務所の藤尾さんに構造をお願いしました。
アプローチの橋の部分を端と端で受けて本当の橋のようにしたいと思っていましたが、地震時の揺れ方が違うので不可能ですとか(鵜沼の家のアプローチは橋に脚を付けて片持ち梁のようになっています)、南の柱は無しにでもできますけど、付けておいてくださいとか、(構造に少し無理をさせるより、安心感がほしいと思い)、梁成(梁の高さ)や、スラブ厚(コンクリートの厚さ)など、実施設計に必要な事柄を中心に打ち合わせていきます。

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藤尾建築構造事務所 ホームページ

 

 

鵜沼の家で考えたこと 10 土地売買契約

土地売買契約

敷地測量も終わり地主さんと土地の売買契約を結びます。
地主さんはお世話になっているJAさんを。私は友人の宅建取引主任者に仲介を依頼しました。
近所の銀行で契約書を取り交わします。
土地売買価格500万円
仲介手数料(500万×3%+6万円)×消費税1.05%=22万500円

不動産売買契約書

 

 

鵜沼の家で考えたこと 11 農地転用

農地転用

地目が農地だったため、住宅を建てられるように農地転用をします。
農業委員会の許可を得るため最低1か月程度かかります。
地区を納める農業委員さんにハンコをもらったり書類をそろえたりと事務作業が続きます。

農地転用許可書

 

鵜沼の家で考えたこと 21 平面計画 45°傾けた理由4

平面計画 45°傾けた理由4

鵜沼の家の方形屋根の勾配は5寸勾配(10横に行って5上がる)です。
それを45°の方向から見ると約3.5寸勾配に見えます。
また45°の方向からみると対角線方向の方が軒の出が長くなるのでよりプロポーションがよくなります。


正面から見たプロポーション。この見た目をつくる為に45°傾けた。

 

鵜沼の家で考えたこと 22 平面計画 45°傾けた理由5

平面計画45°傾けた理由5

45°傾けると一番南側の窓は南東方向と南西方向の2方向に開く事が自然となります。
この2方向に開く窓は1方向に開く窓とは比べ物にならないほど開放感があります。先端に立てば180°以上の視界が開けます。

また、実際住んでみると、1方向では風向きの影響でほとんど室内に風が入ってこない場合でも、もう片方の窓を開けると風がよく通る場合があり、この2方向窓は風通しも有利に働きます。


鵜沼の家のリビング。2方向に開く窓。

鵜沼の家で考えたこと 23 平面計画 45°傾けた理由6

平面計画45°傾けた理由6

建物を45°傾け、アプローチを道路からまっすぐとると、建物へ斜めから進入できます。
斜めから入る事で、建物をパース的にとらえる事ができ、また来訪者と正対するのではなくをすっと迎える事ができるようになります。

鵜沼の家アプローチ。

 

 

鵜沼の家で考えたこと 24 平面計画 鬼門 裏鬼門

鬼門 裏鬼門

建物を設計する場合に家相を考えます。
家相(かそう)とは、土地や家の間取りなどの相(見た目、ありさま)、またはそれによって住人の運勢をみる占術。

北東方向に鬼門。南西方向に裏鬼門があり、水回り、玄関等は設けない方がよいとされています。

信じるか信じないかは施主によるところなのですが、鵜沼の家では玄関だけは外しています。
そのため玄関は北西に設けています。
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2階平面図

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1階事務所にも玄関がありますので、事務所玄関は南東に設けています。

鵜沼の家で考えたこと 25 平面計画 ダイニングの位置

ダイニングの位置

玄関の位置の次に考えた事はダイニングの位置です。
鵜沼の家ではリビングの位置よりも、ダイニングの位置を重要視しました。
それは、朝家族が集まる場所がダイニングであり、夜家族が集まる場所がダイニングだからです。

そこでダイニングの位置を家の東南にもってきました。

朝日のあたるダイニングで一日を始める (宮脇檀)

朝日を浴びると健康によい。朝が気持ち良いとその一日が気持ちよくなります。
そして鵜沼の家で一番眺望の良いのも南東方向です。


丸印がダイニング。南東を向いています。

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今朝の鵜沼の家のダイニング。朝日はまぶしすぎる程入ります。冬でも日光を浴びると暖かくなります。

 

 

 

鵜沼の家で考えたこと 26 平面計画 ダイニングの形状1

ダイニングの形状1

鵜沼の家のダイニングは2階を宙に浮かすように外へ張り出しています。
これは外の景色を積極的に楽しむためです。
ダイニングからは180°のパノラマが広がります。
決して良い景色とは言えないのですが、遠くまで視線が抜けるので、それなりの心地良さがあります。

窓際は室内の他の空間とは少し違った特殊な空間として、生活空間のきわめて快適な部分として、新しい意味での縁側として、窓際空間を設計したい。(宮脇檀)


犬山モンキーパークの観覧車も見えます。

 

 

 

鵜沼の家で考えたこと 27 平面計画 ダイニングの形状2

ダイニングの形状2

ダイニングを建物より出した理由として、軒下空間を楽しむ事もあげられます。
半屋外的な位置に設ける事によって、室内にいながら、屋外でご飯を食べているような気持ちよさを体感できないかと思ったわけです。

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室内の垂木が外部に連続していく。

 

 

鵜沼の家で考えたこと 28 平面計画 ダイニングの形状3

ダイニングの形状3

ダイニングを出した理由として人の動線も考慮しています。
キッチンやリビングや廊下の人の動きに対し、飛び出す事によって、ダイニングにたまりを作る事ができます。
廊下のような所にダイニングを作ってしまうと落ち着きません。

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たまりが重要。

 

 

鵜沼の家で考えた事 29 平面計画 回遊性

回遊性

良い家の条件として回遊性がある事が大切です。
それは家の中でぐるぐる回る事ができる場所があるという事です。
行き止まりがないと楽しく家も広く感じられ、また生活動線もスムーズにいく場合が多いです。
2階建ての場合階段が2つあって1、2階もぐるぐる回れると理想的です。

鵜沼の家では2階の階段を中心にして回遊性をとっています。
玄関→リビング→ダイニング→廊下→玄関となっています。
これによって玄関に入ったお客さんはそのままリビングへ。家人は玄関から廊下へ。洗濯物は玄関を通って物干場へと動線を使い分けたり、短くなったりさせています。

回遊性のあるプラン。

 

鵜沼の家で考えた事 30 断面計画

断面計画

一般に良い家というのは外観はなるべく小さく、内部はなるべく大きくと言われています。
それには天井フトコロや床下、屋根裏といった空間には表れてこない無駄な場所を少なくすると良いです。
鵜沼の家ではほとんど無駄な部分がない断面となっています。

鵜沼の家の断面。

鵜沼の家で考えた事 31 断面計画2

断面計画2

鵜沼の家の一番低い天井高は2階のリビングの梁下で、1m84cmです。
この高さは私(身長175cm)が歩いて頭がふわふわと感じない一番低い高さにしています。

天井高が1m84cmは一般の人には低いと感じるかもしれませんが、リビングの一部でありその他が吹き抜けているのでそれほど低く感じません。
天井高が低いと、空間に落ち着きができたり、気積も減るので、冷暖房効果が高くなったりします。

建築費も安くなります。

また高さのメリハリを付ける事で、建物の面白さも生まれます。

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梁下1840。